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「認知症」とは、「一旦発達した知能が、何らかの原因により脳が破壊され、再び持続的に低下した状態」です。「認知症」には下記のような特徴があります。 (1) 知能の障害 知能を一言で説明するのは困難ですが、ここでは、 ● 記憶力が悪くなり新しいことが覚えられない(記銘力障害) ● 以前の経験が思い出せない(健忘) ● 計算ができなくなる(計算障害) ● 判断を間違う(判断障害) と考えてください。これらの知能の障害により日常生活でいろいろな失敗を起こすようになります。 (2) 後天性 いわゆる知的障害のように知能が十分に発達しなかった場合は、「認知症」とは呼びません。 (3) 器質性変化 肉眼や顕微鏡などで目で見えるような病変があることを言います。 (4) 慢性脳症候群 脳が慢性にゆっくりと破壊されていく状態を言います。交通事故で頭を打って損傷したり、細菌やウィルスで急激に脳が破壊されたような場合は「認知症」とは呼びません。このような急性脳症候群は時間の経過とともに改善していくのが一般的ですが、改善した後に認知症となることもあります。外傷性認知症や日本脳炎の後の認知症も存在します。 (5) 固定的、不可逆性 「認知症」は基本的に改善したり治癒することはありませんので、症状が固定的、もしくは元に戻らない不可逆性の状態ということになります。 これらのように認知症症状を引き起こす(脳を破壊する)要因を一次要因といい、下記に記しておりますとおり、・脳血管性要因、・萎縮性要因、・脳脊髄駅循環障害要因、・その他(感染症、頭部外傷など)があります。 脳血管性の要因による認知症は下記のものがあります。 (1) 脳卒中後認知症 脳梗塞は、脳内の動脈内で血液が凝固し内腔を閉塞してしまったり(脳血栓)、あるいは脳外の血管あるいは心臓にできた血液の小さな塊が脳に流れてきて脳内の動脈に詰まってしまい(脳栓塞)、そこから先に血液が流れなくなり、脳が壊死に陥った状態をいいます。 また、脳出血は脳の動脈壁が破れて出血が起こり、周囲の脳組織を破壊、壊死させた状態をいいます。 脳梗塞や脳出血が起こると、突然あるいは急速に意識が濁ったり喪失し倒れてしまい、場合によっては短時日で死に至るという脳卒中という状態が現れます。 脳卒中が回復しても、多くは片麻痺や失語症などの後遺症が残り、そのなかの一部では脳卒中発作後半年から1年後くらいに物忘れなどの認知症症状が生じてくることがあります。これは正式には「脳卒中後の認知症」ということになります。 (2) 多発梗塞性認知症 上記とは違い、非常に小さな脳梗塞や脳出血が起こった場合は、自覚症状がなかったり感じてもふらつきやめまい程度であまり気がつかないことがあります(一過性脳虚血発作)。これらは大きな脳卒中発作の前兆といわれていますが、発作を起こさなくても、小発作を繰り返すうちに、脳内に小さな梗塞巣が多数生じ、その結果として麻痺は目立たなくても、徐々に認知症の症状が出現する場合をいいます。 (3) その他の脳血管性認知症 脳は豆腐のように柔らかな内臓で、その回りを頭蓋骨という骨の器で守っています。さらに脳は頭蓋骨のなかに、順に「硬膜」「クモ膜」「軟膜」という3枚の膜で保護されています。この硬膜やクモ膜の中にはそれぞれ動脈・静脈が流れていて、それぞれが何らかの原因で出血して脳を圧迫することにより、脳に破壊され認知症が出現することがあります。たとえば、クモ膜下出血後に認知症になったり、慢性硬膜下出血で認知症症状が現れたりします。 脳の神経細胞が変性・死滅し、脳が萎縮して認知症が生じてくる病気です。 (1) 初老期アルツハイマー病 早い場合は40歳前後から、多くは50〜60歳前後の初老期に発病し、進行性の経過をたどり非常に高度な認知症に至る病気です。死後、脳を解剖すると強い脳萎縮が認められ、顕微鏡で調べると老人版図呼ばれるシミのような斑点が多数みられ、神経細胞の多くが死滅しその数が減少しており、残存する神経細胞にもアルツハイマー原繊維変化という特徴的所見が認められます。 (2) アルツハイマー型老年認知症 脳萎縮性認知症の代表的な病気で、多くは70歳台に発病し、進行性の経過をたどります。脳血管性認知症と合わせると、認知症全体の8〜9割を占めるといわれています。この病気は根本的な治療法は研究段階で、日本国内でも薬による治療が始まったばかりです。 死後に脳を調べると、(1)初老期アルツハイマー病と全く同じ変化が見つかることなどから、今ではふたつのアルツハイマー型認知症は発病年齢が違うだけと考えられるようになってきています。 (3) ピック病 アルツハイマー病同様、初老期に発病し進行性の経過をとります。症状の特徴は初期段階では物忘れよりも性格や人柄の変化が目立ち、非常に奇妙な言動や軽犯罪的行動をとり、精神病と誤診されることもあります。また、帯続症状といって、同じ文章やあいさつ、言葉、歌の一節などを何度も繰り返し、同じ行動を繰り返すことがあることから、溝がとんで壊れたレコード盤と比喩されることもあります。 (4) クロイツフェルド・ヤコブ病 非常に稀な病気で、初老期に発病することが多いようです。多くの認知症は何年という単位で進行していきますが、この病気は非常に悪性で進行が早く、発病後数ヶ月から1年で死に至ることもあります。この病気の原因はプリオンという異常タンパク質による感染ということがわかってきています。この病気とよく似た病気が狂牛病です。 脳は頭蓋骨と硬膜、クモ膜、軟膜により保護されています。このクモ膜のなかを脳脊髄液という液体が流れており、これにより脳が壊れにくい仕組みになっています。この脳脊髄液の生産と排泄のバランスが崩れたり、何らかの原因でその流れに障害が起こると脳脊髄液が頭蓋内にあふれます。成人では頭蓋骨が硬くなっていますので、脳そのものを圧迫して脳を破壊し認知症を生じさせます。 このような病気を「正常圧水頭症」といいます。症状としては、認知症に加えて早い段階から歩行障害と失禁があるのが特徴的で、治療としては脳外科的手術により全治が可能です。 (1) 進行麻痺 進行麻痺は脳の梅毒です。梅毒に感染してから10〜20年後に認知症症状を発症し、放置すると進行性の経過をたどり死に至ります。 (2) アルコール認知症 アルコールは神経毒であり、長期・大量に飲用すると神経細胞が死滅し、認知症となる可能性も考えられます。特にアルコール度の強い蒸留酒を長期飲用すると、コルサルフ病といい、記銘力障害、失見当識、作話症を呈する場合があります。 (3) 身体疾患に伴う認知症 身体の様々な内臓疾患が直接・間接に脳に影響を及ぼし、認知症を引き起こすことがあります。 例えば、肝硬変では血液中にアンモニアが増え、これが脳を破壊し認知症を生じさせます。また、甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する役割があり、このホルモンが不足すると、脳の代謝も低下し認知症を呈してきます。その他にも、重い貧血や心疾患、肺疾患等でも認知症を起こすことがあります。 認知症の一次要因による基本症状を増悪させたり、修飾する要因を認知症の二次要因といいます。次のページで詳しく解説していきます。
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