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脳の外表面に近い部分を皮質(灰白質)といい、その内側の部分を髄質(白質)といいます。 (1) アルツハイマー型認知症の脳の変化 脳の皮質には約140億個の神経細胞があるといわれています。アルツハイマー型認知症になると、その原因はわかりませんが、この皮質の神経細胞に変化が生じ、最終的には神経細胞が死滅していきます。 死滅しつつある神経細胞を顕微鏡で調べますと、アルツハイマー原繊維変化という特徴的変化が見つかります。また、皮質の神経細胞間には老人斑といわれるシミのような病変が見られます。このような変化を示しながら、皮質の神経細胞はどんどん死滅し、脳が萎縮していきます。 (2) 多発梗塞性認知症の脳の変化 脳の血管分布の関係から小さな脳血管障害は脳の髄質に起こりやすく、神経細胞のある皮質には起こらないという特徴があります。つまり、梗塞性認知症では、髄質の小さな脳梗塞により、そこを走っている神経線維の一部が切断されてしまいます。 その結果、皮質の神経細胞はかなり残っていても、神経細胞からの情報がうまく伝わらなくなります。 梗塞型認知症では、脳の骨髄に小さな欠損(脳梗塞や脳出血)が多数生じます。脳の髄質には皮質にある神経細胞から出た神経線維があります。この神経線維には、脳と身体の各部との情報交換を行う縦糸と、脳内の神経線維同士の情報交換を行う横糸があります。 梗塞型認知症は、髄質に起こった小さな脳梗塞や脳出血がこれらの線維の一部を切断するために起こるものです。縦糸が切断されると、運動機能や感覚・知覚機能に障害を生じ、横糸が切断されると、脳内の情報ネットワークに障害を生じます。 (1) 機能・記憶にばらつきがでる 脳の神経細胞は場所によってその働きや役割に差があります。したがって、脳梗塞の起こった場所によって低下する機能に強弱がでてきます。同様に、記憶力についても脳の場所により記憶する種類に差がありますので、梗塞の起こった場所によって低下する記憶が異なることとなります。このように梗塞型の認知症では、記憶の欠落にばらつきがあるため、まだら認知症とか篩(ふるい)状認知症と呼ばれています。 (2) 記憶の帯はつながっている アルツハイマー型認知症は記憶の帯の連続性がなくなりますが、梗塞型認知症では、記憶の帯が虫に食われたように穴があくような状態になります。穴のあいた部分の記憶は欠落していますが、現在から過去までの記憶の連続性は維持されます。 ![]() ![]() (3) 情報過多でパニックに 情報処理のための神経線維(横糸)が切断されると、情報はバイパスを迂回して処理されますが、バイパスで処理できる情報量には限界があります。新たに梗塞が起こったり、多量の情報が脳内に入って処理しきれなくなると、ついにはパニック状態となり、興奮、混乱に陥ってしまいます。ですから、梗塞型認知症の高齢者には、情報は小出しに少しずつ、ゆっくりと提供する必要があります。 (4) 突然の状況変化に対応できない 梗塞型認知症では、脳の情報処理能力が低下していますから、突然の環境や状況変化が起こるとうまく対応できなくなります。誰かが急に接近してくると、情報が急速に入ってくることとなり、突然大声をだしたり、興奮したり、相手をたたいたりするようなトラブルも起こりえます。 (5) 感情の起伏が大きい 情報パニックが起こりやすいため、ちょっとした刺激で感情や欲動の動揺が激しく起こることがあります。感情失禁などはこの典型的な例です。 (6) 判断・思考などは健康人と同じ理屈で処理される 梗塞型認知症では、皮質の神経細胞は残っていますから、判断・思考・計算機能などの基本的精神活動は健康人と同じ時空間や理論・理屈で処理されます。そこがアルツハイマー型認知症と大きく違うところです。 (7) 状況不安をもちながら現実世界に生きている 梗塞型認知症では、周囲で起こっている状況判断が遅れたり偏ったりして不安になります。この不安は周囲の状況によって引き起こされたり、増強したり、軽減したりしますから、状況不安と呼ばれます。梗塞型認知症の高齢者は、状況不安をもちながら、健康人と同じ理論・理屈の現実世界で生きていることになります。 アルツハイマー型認知症と多発梗塞性認知症の心理に違いがあることは先に述べたとおりです。これらの特性には全く正反対なものもあります。これを理解しないでケアをすると、高齢者にとってかえって不安を増長させたりすることになりかねません。 認知症高齢者のケアを行っていく上では、医療的な側面もあわせて理解しておきましょう。ケアの詳細については、認知症高齢者のケアをご覧ください。
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