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認知症の症状・病状・メカニズム
4. 病気の説明 (6)その他の認知症、間違えやすい病気

仮性認知症
一見すると「認知症」のように見えますが、記憶障害がないかごく軽度な場合は「仮性認知症」と分類します。

仮性認知症は、(1) 外界からの何らかの精神的・心理的ストレスが原因の心因性疾患と、(2) 身体内部の不明の原因により起こる内因性疾患、に分けられます。

(1) 心因性精神疾患
強い精神的なショックにで起こる急性心因反応と、慢性的ストレスや長期の精神的葛藤や欲求不満により起こる神経症(ノイローゼ)などがあります。

(2) 精神病、そううつ病など
内因性精神疾患の代表は「精神分裂病」と「そううつ病」で、身体内部の何らかの異常による原因不明の精神病です。うつ病は高齢者にもしばしばみられ、認知症と誤診されやすい病気のひとつです。

仮性認知症の代表的な疾患は、うつ病と急性外因反応として起こる軽い意識障害です。意識障害は、精神安定剤やパーキンソン病の治療薬の副作用で起こることがありますし、水分不足等が原因で起こるせん妄などもあります。

仮性認知症はしばしば「認知症」と誤診されますが、いずれの仮性認知症も治療で改善されますので、正しい診断と早期発見が重要です。
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せん妄
人の意識は、「清明」→「通過症候群」→「傾眠」→「せん妄」→「昏睡」という段階で徐々に悪化していきます。

このうち、「せん妄」は軽い意識障害と同時に精神興奮が混在した状態で、よく認知症と間違われます。
せん妄は、次のような症状を伴います。

(1) 記銘力障害・見当識障害
記銘力障害ないし健忘があり、その結果、現在の日付や時間、今いる場所がわからないなどの見当識障害も起こります。

(2) 集中困難
会話や行動にまとまりがなくなり、それぞれが完結しない状態になります。

(3) 気分や感情の不安定
ぼやっとして眠そうで夢見るような状態から、突然、興奮・攻撃・怒り・恐れなどに変化することがあります。

(4) 多動
常に体を動かし、落ち着きません。

(5) 睡眠障害
「夜間せん妄」と呼ばれるゆえんで、夜間一睡もせず興奮状態を呈し、逆に昼間はウトウト眠ってしまうなど昼夜逆転となります。

(6) 錯覚や幻覚
夜間に天井や壁の模様や汚れをネズミやムカデなどの小動物と間違えたり、騒音を自分を脅迫する声と間違えたり、ひどくなると、幻聴、幻視などもあらわれます。

せん妄はその症状からしばしば認知症と間違われますが、最も大きな違いは症状の時間的変化で、せん妄では、今普通に話していたと思えば数分後に意味不明なことをいうなど、その症状の変化が大きい特徴があります。
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せん妄の原因
せん妄はいろいろな原因でおこります。

(1) 頭内疾患や頭部外傷
頭蓋内や脳に何らかの急性の病気が起こり意識がにごるとせん妄となることがあります。

(2) 脳の酸素不足
脳は多量の酸素を費消して働いていますが、肺の病気や貧血、心不全など何らかの原因で脳内の酸素が不足すると、意識がにごってせん妄となることがあります。

(3) 感染症・化膿症
脳そのものに細菌などが進入して起こる脳脊髄膜炎や、脳以外の感染症では、肺炎などもせん妄の原因となります。その他、胆嚢炎、膀胱炎、急性中耳炎などでもせん妄になることもあります。

(4) 栄養障害
俗にいう栄養障害でもせん妄が生じます。

(5) 脱水
栄養障害にもましてせん妄の原因となりうるのが脱水です。一般成人では一日に約2リットルの水分が対外へ出ていきます。体内の水分減少がある一定限度を超えるとせん妄が起こります。

そのほかにも、外傷や骨折、薬の副作用などでせん妄が起こります。

せん妄は、そのほとんどが早期診断と適切な対応で改善、消失します。せん妄は何より早期に診断して早期治療することが大切です。
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うつ病

せん妄と並んで認知症と誤診されやすいのが「うつ病」です。
「うつ病」は次のような症状が起こります。

(1) 感情面の症状
悲哀、気の沈み、厭世、卑下、罪過、心気、自己非難など

(2) 意欲と行動面の症状
決断と実行の抑制ないし不能

(3) 思考面の症状
思考抑制、絶望、自殺念慮、妄想

(4) 身体症状
不眠、頭重、食欲低下、吐き気、肩こり、背痛、腰痛、など

(5) 日内変動
朝方から午前中の不調、不快感


高齢者のうつ病は、その他の年齢層のうつ病と違い、

  • 不安・焦燥感が強い
  • 制止症状が強い
  • 妄想を形成しやすい
  • 遷延しやすい
  • 認知症と誤診されやすい

といった特徴があります。
うつ病の本態はまだ解明されていませんが、神経細胞を働かせるための化学物質が脳の中に不足した状態と言えます。したがって、治療は不足している化学物質を薬で補えばよいことになり、うつ病は薬によく反応する病気ですので、早期発見、早期治療が大切になります。

また、うつ病のお世話の原則は「安静」と「休養」です。うつ状態になると、一般的には励ましたり気晴らしを進めたくなりますが、うつ病では励ますことは絶対してはならないことです。とにかくゆっくり休養をとらせることがお世話の基本です。

うつ病で最も危険な行為は「自殺」です。そのリスクが常に付きまとうと考えるべきです。自殺をする人は、必ず何か前触れを示しますので、そのそぶりを事前に察知し、周囲の人が注意深く見守りお話を聞いてあげるようにしましょう。

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妄想と幻覚
高齢期にはうつ病以外でも妄想や幻覚が出現し、しばしば認知症と誤診されることがあります。

(1) 幻覚
幻覚とは実際には存在しないものが知覚される状態をいいます。

知覚には、「見る」「聞く」「嗅ぐ」「味わう」「皮膚の感覚」があり、一般に5感といわれています。それぞれの幻覚を「幻視」「幻聴」「幻臭」「幻味」「幻触(または体感幻覚)」と呼びます。高齢者はこのなかでも幻視が起こることが多いようです。

体感幻覚も比較的多いようで、腹の中に何か異物が入っただとか、虫が服のなかに入って気持ち悪いなどの訴えが多いようです。


(2) 妄想
妄想とは、間違った考えにとりつかれ、それを確信してしまい、間違った考えを修正することができない状態です。高齢期には退職や知人との離別などによる社会的縮小体験や喪失体験があるため妄想が起こりやすくなります。

妄想の症状も、物盗られ妄想や被害妄想以外にも、健康への不安からの心気妄想、経済的不安からの貧困妄想、配偶者や家族との離別への不安からの嫉妬妄想などもみられます。

若い人でも妄想は起こりますし、その対象は、例えば、不特定多数の人が自分の命を狙っているといった被害妄想が多いようですが、高齢者の場合は妄想の対象が比較的身近な人物になる傾向があります。

例えば、物盗られ妄想の対象が介護者である息子の嫁であったり実の娘だったりしますから、余計に介護者の負担を増長させることもよくあることです。

この場合、犯人呼ばわりされた者としては、否定したくなる気持ちはよく理解できますが、否定することは逆効果になります。一旦、妄想を受容し妄想による苦痛を共感してあげたり、もしくは聞き流しておく程度の余裕が必要となります。

また、妄想は環境により大きく改善することも知られており、環境を変えたり周囲の者がよく説明してあげるなどで、妄想が消失したり軽減されたりします。

薬物の利用も効果があるとされていますので、医師に相談してみるのもいいでしょう。

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